バクテリオ ファージ。 ファージ

バクテリオファージの利用|まめ知識|応用生命科学科|学科紹介|東京薬科大学

バクテリオ ファージ

細菌をとしてするので,単にともいう。 体内でのファージの増殖は結果的にはという現象を起すので,細菌を食べるものという味でこの名がつけられた。 ファージが特定の細菌の表面に吸着すると,まずファージが細菌内部に注入され,細菌固有の核酸の機能が阻害されるようになる。 一定の 約 10分 ののち,ファージ核酸その他のファージ構成成分が次々に再生され,後 20~40分には 100~200個の新生ファージが出現し,その宿主細菌が崩壊してファージ粒子が放出され,その周囲にある細菌細胞に吸着して増殖を繰返す。 のなかで,感染,増殖の機構が最もよくわかっているのがこのバクテリオファージで,生命現象解明のモデルとして用いられている。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について の解説 細菌に寄生し、その菌体を溶かして増生するウイルス。 細菌ウイルスと訳され、単にファージともよばれる。 このウイルスは、カナダの細菌学者デレルF. d'H rellによって発見され(1917)、「細菌を食べる」という意味からバクテリオファージと命名された。 しかし、その後、これより2年前の1915年、すでにイギリスの細菌学者トウォートF. Twortによって同じものが発見されていたことが判明した。 バクテリオファージの作用は、細菌の種に特異的に働く場合と広範な種にわたって働く場合とに分けられる。 細菌に特異性があるバクテリオファージは、細菌のファージ型別(細菌の簡易的な鑑定)に用いられるし、作用が広範にわたるバクテリオファージでは、元来、溶菌しなかった細菌に対してこれを適応させ、より多くの細菌を感染させることができる。 後者は、とくに分子生物学などでは意義をもつものである。 [曽根田正己] 増生のメカニズム感受性細菌に感染したバクテリオファージは、その核酸を細菌細胞内に注入する。 すると、細菌細胞内では、ただちにバクテリオファージの核酸が転写され、核酸が合成されていく。 その後、細菌細胞においては、さらにコア・タンパク質(外殻のタンパク質)の合成が行われて、もとのバクテリオファージが形成される。 このファージ形成がおこると細菌細胞は溶菌され、その結果、バクテリオファージは新たに遊離する。 このようなファージ増生の機構は、宿主である細菌が増殖する間に進行するため、バクテリオファージによる溶菌作用は、急速な進行をみる結果となる。 また、宿主の細菌を固体培地で培養し、バクテリオファージを感染させた場合には、これに特有の溶菌斑 はん (プラークとよぶ)ができる。 [曽根田正己] DNAファージとRNAファージバクテリオファージには、DNAファージとRNAファージの両者が知られている。 大部分のDNAファージにおけるビリオン(細胞外で感染性を有するウイルス粒子)の核酸は、通常は2本鎖である(ときに1本鎖の例も認められる)。 RNAファージの核酸は1本鎖であり、2本鎖は知られていない。 また、バクテリオファージの多くのものは、ビリオンの核酸が多面体のカプシド(殻)の中に含まれている。 多面体でないものはフィラメント状である。 ビリオンの中の核酸は、螺旋 らせん 形のタンパク質構造体(いわゆる尾部)と連結している。 これは吸着器官としての働きをもったものである。 T系偶数ファージ(後述)の尾部は尾繊維からできており、付着装置(スパイク)となっている。 [曽根田正己] 病原性ファージと溶原性ファージバクテリオファージは、病原性ファージ(ビルレント・ファージvirulent phage)と溶原性ファージ(テンペレート・ファージtemperate phage)とに分類することもできる。 病原性ファージは細菌細胞に感染するだけで、溶原化する(溶原菌になる)ことはできないが、ほとんどすべての感染した細胞(宿主細胞)を破壊することができるため、プラークは透明である。 大腸菌を宿主とするT系ファージは病原性ファージの代表的なものである。 一方、溶原性ファージは溶原菌から誘発し、生成されるファージであるため、宿主細胞を破壊することなく、宿主染色体1個当りに1個存在する。 また、溶原性ファージは、細胞の増殖と同調して増生する遺伝因子プロファージ(潜在ファージ)となることがある。 これは遺伝子の運搬者であり、ときには遺伝子そのものとしての意味をもつ場合もある。 このようなプロファージをもつ細菌がいわゆる溶原菌であり、細菌が遺伝的なバクテリオファージを生産し、放出する性質を溶原性という。 また、プロファージは、たいへん低い頻度ではあるが病原性ファージとなり、細菌細胞内で増生し、溶菌をおこし、成熟ファージを生ずることがある。 [曽根田正己] T系ファージ大腸菌病原ファージをT系ファージといい、T 1からT 7までの7種がある(Tはタイプの意)。 T 2、T 4、T 6の偶数番号のついたファージ(T偶数ファージという)は、偶然にも性質や形態に類似点が多く、また、DNA分子の多くの部分についても相似性のあることが証明されている。 しかし、T 1、T 3、T 5、T 7の奇数番号がついたファージ(T奇数ファージ)についてはあまり相似性がみつかっていない。 Lederbergらによって、大腸菌K12株に溶原化しているバクテリオファージとして発見された。 宿主は特定の大腸菌であり、感染後、溶菌経路をとる場合と、溶原経路をとる場合の二つがある。 それぞれの経路の概要は次のようになる。 (1)溶菌経路 〔1〕ウイルスDNAが健全な大腸菌に注入する。 〔2〕そのDNAは環状となる。 〔3〕環が転がるような状態をとりながら、多数のウイルス遺伝子のコピーを含む紐 ひも 状のものを形成する。 〔4〕ウイルス遺伝子の情報によって、頭部や尾部のタンパク質を合成・集合し、1単位のDNAを頭部の中に詰め込む。 〔5〕頭部と尾部が集合し、ファージ粒子が構成される。 〔6〕感染後、約60分が経過すると、宿主の細菌細胞は溶菌し、100個以上のウイルス粒子が外に放出され、他の大腸菌に感染する。 以上が溶菌経路であるが、この過程のなかで、条件によっては、ファージのDNA粒子は宿主細胞の中で生き続けることがある。 これが溶原経路に入った状態であり、次のような経路をたどる。 (2)溶原経路 〔1〕ファージDNAが宿主の細菌染色体の半永久的な一部に組み込まれる。 〔2〕細胞分裂に伴ってDNAが複製され、娘 じょう 細胞へ分離継承されていく。 〔3〕そのまま代を重ねて細菌細胞へと受け継がれていく。 これがプロウイルス(潜在ウイルス)とよばれるもので、溶菌を誘起する能力を備えている。 なお、このプロウイルスをもつ細菌に紫外線やX線を照射、またはナイトロジェン・マスタード(窒素イペリット)や有機過酸化物などで処理すると溶菌経路へ移行する場合がある。 [曽根田正己] バクテリオファージの採集と分離バクテリオファージの採集と分離は、プラーク形成法によって行われる。 この方法は特定の細菌の種類または菌株に対して、感染能力をもつバクテリオファージを自然界から採集し、分離するのに最適である。 まず、自然界から特定の細菌が多く生息していると考えられる材料をとり、これを滅菌水に入れ、揺り動かしたあと、その上澄みを細菌濾過 ろか するか、またはクロロホルム処理を行う(細菌や菌類はクロロホルムに対して弱いが、ファージビリオンは抵抗性がある)。 これによって細胞性生物は取り除かれる。 細胞性生物のなくなったものを特定の細菌の浮遊液と混合・希釈し、平板培養基上に接種する。 これによって細菌集落が出現し、その集落表面にプラークが出現すれば、自然界から、その細菌に対するバクテリオファージを採集したこととなる。 次に、このプラークから少量のものをとり、さらに平板培養をする。 このような操作を繰り返すことによって、単一のバクテリオファージによるプラークの形成と分離が可能となる。 [曽根田正己] 細菌に感染するウイルスのこと.細菌ウイルス,あるいは単にともいわれる.タンパク質と DNAまたはRNAのどちらか一方 とからなる.核酸としてDNAをもつものはDNAファージとよばれ,F. Twort 1915年 ,F. Loeb,N. Zinderにより発見された.ファージ粒子の大きさは直径20~90 nm 程度のもので,正多面体頭部と尾部よりなるおたまじゃくし形のもの,球状 正多面体 のもの,ひも状のものなどがある.おたまじゃくし形のT系ファージはとくに構造が明らかにされ,頭部にはDNAが格納され,注射針の役割をもつ尾部を通ってDNAが細菌中に注入される.このDNAは感染後複製するとともに,宿主菌のタンパク質合成系を自分自身のなかに保持する遺伝子の命令に従わせて,ファージ固有のタンパク質合成を行わせる.合成されたファージ核酸とファージタンパク質が結合して,完全なファージ粒子となり,同じくファージ合成の際につくられるファージリゾチームにより,宿主菌の細胞膜を壊して 溶菌 ,ファージが放出される.T偶数系ファージ以外では,この増殖機構が明らかになっていない部分も多い.また,入ったファージの核酸が,ある条件下でそのまま宿主菌細胞のに組み込まれて,そのまま生存しつづけ 溶原化 ,誘発を受けるまで,菌染色体とともに複製され,子細胞に伝えられていく現象も見いだされている.このようなファージはテンペレートファージとよばれる.テンペレートファージは宿主菌に感染すると,そのときの条件によって溶菌させるか,また溶原化するかの二つの様式のどちらかの状態をとる .溶原化を起こさないファージはとよばれる. 出典 森北出版「化学辞典(第2版)」 化学辞典 第2版について 世界大百科事典 内のバクテリオファージ の言及 …そして53年のJ. ワトソンとF. クリックによるDNAの二重らせん構造の解明を契機として,分子生物学の飛躍的な発展がもたらされる。 50年代に取り扱われたウイルスはバクテリオファージが中心であったが,60年代以降,これらの分子生物学の知見と,培養細胞によるウイルスの培養方法の確立とともに,動物ウイルスにも研究の目が注がれてきている。 今日,ウイルス学が取り扱う範囲は,ウイルス自体についての形態形式,遺伝子構造と遺伝子の機能発現などだけにとどまらず,宿主細胞の側での遺伝子の構造と機能,発癌やウイルスの病原性を定めている遺伝子とその機能,ウイルスに対する防御機構などの研究にも及んでいる。 出典| 株式会社平凡社 世界大百科事典 第2版について.

次の

(2016年7月発行)食品微生物制御におけるバクテリオファージの利用

バクテリオ ファージ

細菌に感染するバクテリオファージ ウイルスには、ヒトに感染するもの、ネコに感染するもの、トリに感染するものなど様々あります。 そして、細菌にのみ感染するウイルスをバクテリオファージといいます。 第2週でご紹介した抗生物質は、広範囲の細菌に効果を発揮するものがありますが、バクテリオファージはより特定の細菌を狙って効果を発揮します。 抗生物質を飲むとお腹を下すこともありますが、これは抗生物質が腸内細菌を攻撃してることが一つの要因です。 バクテリオファージは腸内細菌を攻撃することはなく、この面においては抗生物質よりも安全といえるでしょう。 バクテリオファージは、他のウイルスと同様に自身の遺伝情報を注入することで組織に異常をきたします。 異常状態となった細菌はこの作用により死滅することになります。 バクテリオファージによる治療 バクテリオファージの特徴から、抗生物質で対処できないような耐性菌の治療方法として研究が進められています。 もともと抗生物質発見の前から、「ファージ療法」とよばれるバクテリオファージを使った治療は検討されていました。 しかし、当時は基礎知識も少なく、ファージの純度や濃度に対する認識も不十分なまま使用したために、効果はバラバラでした。 安全性の面でも、エンドトキシンという細胞が死ぬときに出す毒素による副作用など、信頼性に欠けていました。 近年では、バクテリオファージに関する詳細な知見が蓄積されています。 そのため、新たな課題も生まれています。 細菌はバクテリオファージに対する様々な防御機構を持っているため、その防御機構を突破できるバクテリオファージは限られてきます。 バクテリオファージが体内に入ってすぐに体の組織、例えば唾液などで分解されても効果を発揮できません。 現時点で発見されているバクテリオファージは約1000種類程度で、より多くの病原菌に対応するためには、より多くの種類を見つける必要があります。 バクテリオファージの可能性 欧米では、すでにバクテリオファージを使った感染症治療の臨床試験が進められています。 長らく感染症に苦しみ抗生物質によって治療を行っていた男性が、バクテリオファージを併用することで完治したという報告もあります。 このように、バクテリオファージ単独ではなく抗生物質との併用により、効果を発揮する事例も出てきています。 これまでの研究の積み重ねにより最近では、バクテリオファージ自体を設計する技術も開発されています。 今まで天然でしか得られなかったバクテリオファージが、その細菌の種類に合わせて作り分けができるとあって非常に注目されています。 バクテリオファージのあらゆる研究が進み、細菌による病気の治療法として活躍する日はそう遠くありません。 さいごに 3週にわたってバクテリオファージをテーマにお話をしてきました。 ウイルスと聞くと抵抗感が生まれますが、中にはバクテリオファージのように人の役に立つウイルスもいるのです。 アメリカでは、2006年に食品添加物として認可されています。 ハムやソーセージなどで起こる食中毒対策として、バクテリオファージを添加し腐敗を防ぐというものです。 この他にも、畜産や農業における生物保護の方法としても期待されています。 バクテリオファージ、ますます目が離せません!! 参考文献 米崎哲朗, and 大塚裕一. 3 2010 : 55-58.

次の

抗生物質が効かない耐性菌も簡単に殺してしまう最強のウイルス「バクテリオファージ」とは?

バクテリオ ファージ

一般的な操作を、映像と共に示しています。 なお、培養条件などはそれぞれの株 宿主細菌およびファージ ごとに設定する必要があります。 詳細はをご覧ください。 二重平板法によるファージの増殖• 下層寒天培地と宿主 指示菌とも言う を準備しておく。 滅菌した上層寒天培地を溶かして滅菌小試験管に分注し、保温器であらかじめ温めておく。 または、小試験管に上層寒天培地を分注したのち、それをオートクレーブ滅菌し保温しておく。 ファージ希釈液から適量をとり、それを宿主の培養液と小試験管内で混ぜる。 なお、加えるファージ希釈液の量を多くしすぎない。 ファージを宿主細胞に吸着させるために、適温中で適当時間保温する。 例えば、宿主の生育適温で15分間置く。 あまりに長時間置くと、ファージが細胞内で増殖し、細胞外に放出され始め、ファージ濃度が高く算出される。 小試験管に4mlの上層寒天培地を加え、軽く撹拌したのち、平板培地に注ぎ、軽くプレートを傾けつつ、回して軟寒天がプレート前面に行き渡るようにする。 なお、撹拌する際にあまり強くすると、泡が立つのでそれは避ける。 上層寒天培地が固化した およそ10分程度。 必要であれば、更に表面を風乾する 後、上向きにしてインキュベータに置く。 培養後プラークの計数やファージの回収に利用する。 ファージ懸濁液の調製• 「二重平板法によるファージの増殖」に従い、ファージの濃度を調整し全面がほぼ溶菌した二重平板培地を準備する。 4mlの SMを滅菌済み試験管に入れ,ドラフト内でそれにクロロホルムを2、3滴滴下する。 それを上層寒天培地が壊れないようにして丁寧に二重平板に注ぐ。 クロロホルムに感受性か、または耐性が不明のファージには、クロロホルムは添加していない。 慣れてくると、SMを駒込ピペットで二重平板に注いでもよいが、コンタミネーションには十分注意する。 室温で8時間、または冷蔵庫で一晩程度置く クロロホルムを添加しない場合は冷蔵庫に置くのがよい。 二重平板培地からSMをパスツールピペットで回収する。 回収したファージ懸濁液を0. 回収した懸濁液に宿主細胞が多数存在し、ろ過しにくい場合は、遠心分離 8,000 rpm, 5分程度 をしてある程度菌体を取り除いたのちに、フィルターに通す。 懸濁液は冷蔵庫で保管する。 ファージによっては不安定であまり長期間冷蔵庫に置くことができないものもあるので、そういう場合は早めに凍結乾燥保存または凍結保存をしたほうがよい。 プラークからのファージの回収• まばらにプラークが形成された二重平板培地に、パスツールピペットをプラークの中心に垂直に立て、プラークを寒天ごとくりぬくような感じで回収する。 回収したプラークは、SMに懸濁し、適当に希釈して二重平板法でプラークを形成させる。 この単離操作を3回繰り返し、純化を行う。 スポットテスト ファージ懸濁液中のファージの生残や宿主域を調べるのにはスポットテストが簡単でよい。 指示菌のみを上層寒天培地に混ぜ、下層平板培地に重層し、固化させる。 その際、チップの先に懸濁液の「風船」を作らないようにする 割れた際にファージが回りに飛び散るため。 培養後プラークの形成を観察する。

次の